ピエゾフィルムはフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)の一軸延伸フィルムを高電圧で分極処理したもので、高分子強誘電体と呼ばれています。
このフィルムは、図1に示しますように、フィルムの延伸方向と厚さ方向に大きな圧電性を持ちます。
フィルムの延伸方向の応力σ1によって生じるフィルム面に垂直方向の分極P3は、圧電歪定数d31によって表されます。
このことは、分極したフィルム内では、分極方向と反対方向に、フィルム内に電界が発生することを意味します。
従って、歪とは逆に、フィルムに、電界E3が加わりますと、電界に沿って分極が発生し、分極するための歪γiに相当する変形が起こります。
即ち、式で表現しますと、∇P3/∇σi=d31=∇γi/∇E3(i=1,2,3)
簡単に言えば、フィルムの両面に電圧を加えると、延伸方向(長手方向)に伸び縮みします。
*高分子圧電フィルムの両面に電圧を加えると伸び、逆の電圧を加えると縮む性質があります。(a)(b)
*この圧電フィルム2枚を裏返しに貼り合わせて一枚のフィルムにします。(一般名称:バイモルフフィルム)
*バイモルフフィルムの両面に電極薄膜を形成して、波状に成型して振動板にします。(d)
*振動板両面の電極に電圧が加わると、山が広がり谷が縮み、逆の電圧が加わると山が縮んで谷が広がります。(c)(e)
*従って、電極に音楽信号が入ると、振動板があたかも呼吸をするがごとく振動して音波を発生するのです。
図3のように、この波状振動板をフレームに取り付けて、振動板の両面に形成した電極に電気信号を導入する電極端子を付けてヘッドフォンのユニットにします。
従来のダイナミック型のようにマグネットはいりませんし、静電型のように高電圧のバイアス電極も不要です。
また、電圧が印加されることで駆動しますから、電流は小さくても、比較的高い電圧を出力する電圧駆動型のアンプが適しています。
しかし、現在普及しているオーディオアンプは電流駆動タイプで、大きな電流は流せますが、高い電圧を出力するのは苦手です。
そこで、今回はステップアップトランスを使って昇圧することにしました。
■参考文献
*JAS journal DECEMBER 2001 No.12(ピエゾフィルムを応用した波状スピーカーの開発について)
丈井(テイクティ)、森山(呉羽化学工業)
*電気学会誌2002 vol.122,12号(高分子圧電フィルムによるスピーカーの試作)
大賀(芝浦工業大学教授)、丈井(テイクティ)
次のオーディオ専門誌で紹介評論されています。
(1)レコード芸術 2004年 9月号 P330
(2)STREO 2004年 9月号 P56
(3)Audio Accessory 2004年114号 P270
(4)A&V village 2004年 9月号 P179
(5)さらに2010年現在の間にも、多くの雑誌記事に取り上げられて、良い評価を得ています。